住民主体の健康管理活動
~八千穂を中心に~


2008年6月25日 佐久総合病院 西垣良夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(01)「住民主体の健康管理活動
    ~八千穂を中心に~ 」

     佐久総合病院
      西垣良夫

(02)「佐久総合病院における健康管理活動の歴史」

 ●出張診療・巡回検診(+衛生講話、演劇)
    |
 ●定期的集団検診
    |
 ●村ぐるみの健康管理(1959~)
    |
 ●集団健康スクリーニング(1973~)

(03)「無医地区での出張診療活動」

 ●「潜在疾病」(我慢型や気づかず型)や手遅れの患者が多い状況下、病院で待つのではなく、病院の外に出ての診療の重要性
 ●疾病の早期発見と治療だけではなく、疾病予防のため、「衛生講話」や「演劇」などの健康教育を組み合わせて行う‥・宮沢賢治(詩人・童話作家)の教え

(04)(写真:馬車に乗っての診療)

 

 

 

 

(05)「八千穂村全村健康管理」

 ●年1回、全村民を対象に健康診断の実施
 ●健康手帳(村民全員)と健康台帳(個人、世帯、集落)の活用
 ●健診後の結果報告会で、各個人毎の健康相談と地域の健康状況の説明とともに、寸劇などでの健康教育・保健学習
 ●住民代表としての衛生指導員の役割‥・企画、実施、検討への主体的参加

(06)(図:八千穂村老人医療費(一人当り)の年次推移)

 

 

 

 

(07)「健康管理センターの設立」
    農協組織の「組合員の健康を守る運動」から出発

 集団健康スクリーニングを県下全域に
 ●地区巡回方式
 ●県下厚生連病院が同一方式で実施
 ●市町村との協力共同
 ●最先端医療機器(自動血液分析装置、コンピュータなど)導入による安い健診料

(08)(図:集団健康スクリーニングの情報処理)

 

 

 

 

 

(09)(図:独自開発した診断ロジックの活用)

 

 

 

 

 

(10)「佐久総合病院における位置づけ
     5:3:2方式

 ●入院患者さんへの診療  = 5
 ●外来患者さんへの診療  = 3
 ●保健予防活動、福祉活動= 2

(11)「健康管理の考え方」

 (1)三つの柱
 ●集団検診(地域)と個別健診(人間ドック)
 ●健康教育、保健学習
 ●住民主体の健康な地域づくり
 (2)一次予防から三次予防まで
 ●一次予防の重要性
   「予防は治療にまさる」

(12)「協同組合の病院で働くこと」

 ●21世紀は助け合うことを基調に‥・戦争の時代から協力・協同の時代へ‥・ところが
 ●協同組合専従職員の役割‥・「大切な自然を守り、健康な人間生活の建設という原点的な課題を忘れてはならない」レイドロウ博士
 #大変ではあるがやりがい、生きがいがある

(13)「公衆衛生活動の意義」
(病院職員にとって、松島松翠)

 ●病院が予防活動を行うことは、医療との一体的な結びつきがはかれる。
 ●地域へ出ることで生活の現場を見ることができ、大きな学習となる。
 ●住民と仲良くなり、住民とともに健康を守る運動を広げていける。

(14)(図:公衆衛生とは、C.E.A.Winslow 1949の定義を改変)

 

 

 

 コミュニティ(地域協同社会)の組織的努力によって
    ●環境整備
    ●感染症予防⇒成人病予防⇒生活習慣病予防(今日では)
    ●健康教育
    ●予防に向けた医療と看護サービスの組織化
    ●社会制度の改善
   疾病予防、寿命の延長、精神的、身体的健康と能率の増進

(15)「医師法(第1条)」

 「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」

(16)「憲法(第25条)」

 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上およぼ増進つとめなければならない」

(17)(写真:農家の暮らし)

 

 

 

 

 

(18)(写真:農夫症)

 

 

 

 

 

(19)(写真:八千穂村全村健康管理、「全国に普及させたい」中央の調査団も感心)

 

 

 

 

 

(20)(写真:たらの芽会(八千穂村との交流会)‥・5月)

 

 

 

 

 

(21)(写真:福祉と健康のつどいー1:各ブロックの発表風景)

 

 

 

 

 

(22)(写真:福祉と健康のつどいー2:各ブロックの展示風景)

 

 

 

 

 

(23)(写真:福祉と健康のつどいー3:演劇風景)

 

 

 

 

 

(24)(写真:福祉と健康のつどいー4:演劇の出演者の紹介風景)

 

 

 

 

 

(25)(写真:健康管理合同会議:元気に育て佐久穂の子~私たちが地域で出来ること~)

 

 

 

 

 

(26)(写真:健康管理合同会議:村長さんもグループ討議の輪の中に)

 

 

 

 

 

(27)「佐久穂町地域健康づくり員」(写真:地域健康づくり員の活動パネルと勢揃い写真)
 *自主的な組織活動を通じて、まず自らの健康意識を高め、家庭・さらに地域での健康づくり推進の啓発(26名で活動)

 

 

 

 

 

(28)「地域健康づくり員の活動」(写真:地域健康づくり員の会議模様)

 ●定例会の開催‥・概ね月1回、全て夜間(7:30~9:00)
 ●町の健康づくり事業への提言
 ●学習会の開催
(町職員、千曲病院職員、佐久病院職員も参加)

 

 

 

 

 

(29)「地域ブロックでの健康づくり学習会の運営」(写真:活動の様子)

 ●全て夜間(7:30~9:00)
 ●地区公民館等で開催 6月~9月
 ●構成メンバー(地域健康づくり員、保健推進員、千曲病院、佐久病院、町保健師等)
(1ブロック地域健康づくり員 2~3名)

 

 

 

 

 

(30)(写真:ブロック会の様子:学習会、まとめの作業、まとめ)

 

 

 

 

 

(31)「19年度地域ブロック学習会テーマ」

 1 東ブロック‥‥ 高齢者が元気な町
 2 千曲ブロック‥‥筋肉トレーニング
 3 中央ブロック‥‥食と健康
 4 西ブロック‥‥ 食生活について
 5 畑北ブロック‥‥若さ
 6 畑南ブロック‥‥肩こりについて
 7 八郡ブロック‥‥肥満と健康
 8 穂積ブロック‥‥元気で長生きの人の今

(32)「集団健康健診及び報告会への協力」(写真:集団健康健診の様子)

 ●例年11月下旬~12月中旬に実施
 ●地元地区への協力(仕事等の都合で休めない場合を除く)

 

 

 

(33)「地域健康づくり員の任期・手当等について」(写真:会議の様子)

 ●任期 2年 平成19年4月1日~平成21年3月31日
 ●手当 夜間会議等 1回 1,000円、半日 3,500円、一日 5,800円

 

 

 

 

 

(34)(図表:「地域保健活動はコミュニティーとともに」の一覧図表)
   年代、地域を取りまく背景、佐久病院の保健活動、プライマリヘルスケア(と活動の歴史)

 

 

 

 

 

(35)「住民による健康増進活動の形成」
(日本福祉大学教授 杉山章子)

  長野県八千穂村における実践から

(36)「八千穂村全村健康管理」

 (1)健康管理事業の開始  1959年
   国民健康保険医療費窓口徴収反対運動の不成功
    ⇒病人をつくらない健康を守る運動
 (2)健康管理活動の2本柱
   ・健康診断‥・潜在疾病の早期発見・治療
   ・健康教育‥・衛生知識や健康意識の向上
 (3)健康管理活動の概要
   ・健康手帳と健康台帳
   ・集団健診・‥医学的検査・健康相談・結果報告会
   ・社会的活動‥・衛生教育・生活環境の改善

(37)「健康管理活動を担うう人びと」

 (1)事業計画・推進‥・村役場・佐久病院
 (2)地域の関係機関・スタッフのネットワーク
 (3)住民代表としての衛生指導員
   ・住民と村や病院とのパイプ役
   ・住民参加の保健・医療活動
   ・自主的取り組みの展開

(38)「住民による健康増進活動の展開」
   ~栄養グループの形成と発展~

  <形成期> 1957年~1960年
  <展開期> 1961年~1975年
  <発展期> 1976年~
              (別紙資料参照

(39)「住民による健康増進活動の形成過程」

  プライマリ・メディカルケアとプライマリ・ヘルスケアの結合
    ↓
  健診の定着と全住民による生活の見直し・改善の促進
    ↓
  住民自身による地域保健・福祉ニーズの把握と社会資源の創出

(40)「『住民主体』の活動を可能にする要件」
  その1 活動を育む基盤の存在

  (1)佐久病院による医療環境の改善
    ・無医村的状況の解消
    ・最新の医療技術・設備の提供
  (2)全村健康管理事業による地域保健・医療活動の定着
  (3)住民と関係機関・関係者との間に形成された信頼関係

(41)「『住民主体』の活動を可能にする要件」
  その2 専門職の適時・適切な支援

  (1)側面からの有効な支援
  (2)状況に応じた関わり方
  (3)住民を取り巻く関係者相互の連携と役割分担

(42)「『住民主体』の活動を可能にする要件」

  その3 生活の中で健康を見直す環境づくり
  その4 緩やかで柔軟な集団と組織形成

(43)「『住民主体』の活動を可能にする要件」
  その5 住民全体への活動の普及

   専門職による「教育」
   生活を捉える視点の獲得
    ⇒住民代表の学習・調査
     報告作成過程での問題の整理
      ⇒各地区での伝達講習
       全員が情報・課題を共有

(44)「『住民参加のはしご』の8段階」
   (1,2は住民参加とは言えない、3,4,5は印としての住民参加、
    6,7,8は住民の力が生かされる住民参加)

   8.住民によるコントロール
   7.委任されたパワー
   6.パートナーシップ
   5.懐柔
   4.意見聴取
   3.お知らせ(情報提供)
   2.セラピー(お飾り的)
   1.操り
             (シェリー・アーンスタイン、1969)