日本の医療の構造的問題

2008年5月27日におこなわれた研究会における長純一さんのお話の様子(の途中版)です。

 (1)日本の医療の問題について、膨大なスライドの中からピックアップして話されました。主な項目は;

・OECD Health Data 2005

・クリントン来日時の裏事情

・日本の医師は絶対数不足、その歴史

・医師不足!

・日米病院職員数の比較

・勤務医不足が問題

・OECD審査会合:「日本、格差の大きい国に」

・診療科別増減

・日本はずっと医療費抑制、一方で高齢化が急速に進んでいるのに

・先進国の中で、一番医療費の少ない国、逆に個人負担は高い国

・情報操作の恐ろしさ、情報操作におどらされるな

・G7の内の6カ国の公共事業費の合計よりも、日本一国の公共事業費が多い

・医療費29兆円、葬儀代金15兆円、パチンコ30兆円、公的年金33兆円、公共事業85兆円

・日本の医療崩壊

・世界的に突出した日本の窓口負担率(自己負担)

・国と事業主の負担は減少

・国の形の3パターン

・社会舗装国日本

・タバコは病気と死亡の最大の原因

・製薬企業はなんと利益率およそ30%、病院は赤字で倒産増大

・介護の最大の問題は、「介護を市場化したこと」、地方の福祉がダメになる

・救急出動回数の変化

・医師労働の煩雑化、(外との対応のための)会議、書類、手間煩雑

・米国年次報告書は日本を狙っている

・病院の倒産は、氷山の一角、3分の2の病院は赤字

・日米比較: 米国の病床は日本のICU?

・看護師のバーンアウト率は23%上昇

・医師スタッフ不足

・医療変革時代を乗り越えるために米国の失敗から学ぶ

・医療費亡国論、1983年から厚労省×医師会

・医師の多忙さ

・キューバが飛びぬけて良い、所得ー健康度特性

・しかしながら、元々のアメリカ医療の原点は、「如何にして良い臨床医を作るか」、1910年 Flexner Report、良い臨床医師を育てれば・・・・・・(医療費も下がる)

・これらは、元々、佐久病院がやってきたこと

・医療プロフェッショナリズム:医療憲章

・日本、女性医師が一番少なかった、最近は増加

・家で死亡する方、12.2%、世界で最も低い

・周産期医療の崩壊を防ぐために

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(2)ここから」長野県の医療」、「長野モデル(長寿、低医療費)」のお話がありました。主な項目は;

・健康長寿の長野県

・戦前 環境因 暖かいところ

 戦後 経済因 都市部

 最近       地方

・医療費 日本最下位

・長野県は、なぜ医療費が安いのか? 1997年に厚労省の調査、やさしく書いたのが「PPK」の本

・1997年の調査、つっこみが少ない

・上記に対する国保と厚生連との経緯のお話

・長野県の医療特性、医療と福祉が一緒にやられてきた

・医療を公共財と考えてきたことが大きい、医師数、看護師数ともに37位くらいと低いのに

・このあとで、長さんから配布された1枚の資料「在宅死率」の年度推移のデータと図が説明されました。

 それを、ちょっと書き直したのが下図です。

・1994年頃にカーブが変わった。この頃に国が在宅にシフト。

 1992年に、診療所が在宅医療をする方向へ。在宅へ利益誘導。

 1994年から在宅医療がペイするようになったら、逆に急に在宅死が減ってきた。

 この裏には、病院の締め付け。この図はショッキングな図でもある。国の仮説は崩れている。

・ 佐久地域の在宅死率は、(昔に比べ下がっているが)、佐久病院がかかわっているところはまだ高い

・医療費の高いことが、イコール良い医療ではない。

・結論:長野モデル(のでてきた背景は)、公共性の高い医療社会的公共資本

     そういう資質を持った人がやってきた。地域全体をとらえてやってきた

     米国も元々の原点として、資質の高い医療者を育てることにあった。

     これらをやってきたのが佐久病院。

     以上、長野モデルの私なりの意義について、お話しました。

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(3)ここから質問・議論の時間となりました。主な議論の項目は;

・長野モデル、佐久病院がやられてきたことの意義、高い倫理観。

 これらのこと:「佐久病院の高い意識がどうやってPPKをつくったか?」を、人にわかりやすく説明したい

 どのようにするのがよいか?

・国保と厚生連の橋渡しをしたい

・東京に行くと駅の看板は、ほとんど開業医

 医療を公共財の観点から、今、再度、検討すべき

・1997年の調査は深められていない。学識経験者に入って再検討・評価をする必要がある

・医療の世界では、「根拠」という用語がはやっている。これもアメリカからきたもの。

 「佐久病院史」の研究は、病院以外の人、社会科学の先生方の分析も加えて本になっている。

 同じように「長野モデル」を検証する必要がある。

 PPKも歴史的に横に切ってやったもの

 問題は、Y先生との出合いも含め、「運動」として、お互いに議論、共鳴しながら、縦軸の歴史を研究する中から根拠のある、普遍性のあるものを検討していく必要があると思う

 誰が組織してやるか

 厚生連などが、2、3年かけてやるのも良いと思う

・(ここで上田からこられた自治体職員の方のお話を以下に;)

 上田で「地域医療を支える会」をやった。(そこでは北澤さんの講演もやられたとのことです)

 今日は勉強しにやってきた。

 長野県にも地域格差がある。

 上田に「長野モデル」というようなSocial Capital があるかと言われると、なかったのではないか。

 厚生連、国保もなかった。

 先ほどの話で、「連携」という話があったが、

 上田では、誰がコーディネイトするのか? 核がない。医療、福祉、開業医、。。。

 コアの公共的病院が大事であると感じた。

 「上田には、地域を捉えた総合的病院が無いことが問題なのだ」と思った。

・長野には、県立中央的病院がない

 若月先生が抵抗した、「農民のために

 「民」でもなく、「官」でもなく、地域住民のための「」であるべき。

 厚生省の統廃合の第1号が上田の国立病院であったことは、象徴的

・(および上田の方が;)

意識がどういう風に違うかが大事だと思った。

住民の考え方、合併前の小さな地域での住民の考え方が大事

・「医療連携」というが、うまくいっていた地域まで、国は同じようにやらないとならないとする必要はない。

 都市部では、機能分けの連携というものがあろうが、地域毎に医療政策が違っていていいはずだ。

 先駆的にやってきた地域がある

・在宅死率ではなくて、「かかりつけ医はいますか?」と聞くのはどうか。

 それが、長野県の医療費が低いことの話につながらないか?

 1994年は、佐久病院に「地域ケア科」ができた年でもある。

 在宅死率と在宅医療の質は相関しないとみている。

・(ここで、夏川院長から;)

 もうひとつ、長野県の医療の特長がある。それは、

 ガンの死亡率が、男性は一番低く、女性も2番目に低いことである。

 これも医療費が低いことにつながらないか?

 それは、なぜかという検討も必要。検診率、フォローの問題、生活習慣

 わかりやすいのは、このガンの死亡率

 検診、診断、予防。

 これを引っ張ってきたのも厚生連。

 外に出て行って、保健予防活動

 このような活動は、国、県立はやっていない。

 しかしながら、そこのところが減ってきたことは危惧するところである

 そこにも焦点をあてて、検討する必要がある。

・「運動」として、保健予防活動をやってきたところの評価も必要

 1978年 アルマータ宣言。キーは「公共性

 「アクセス」、「住民主体

 これを佐久病院がやってきた。1978年に世界の原則になる前から

 方法論と目的があり、今は目的が注目されているが、方法論が大事

 一方で、「根拠」から見られる。難しいが。。。

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                                                                     (メモ文責:M-SAKU Networks 編集者)